個別原価計算とは受注に対して個別に生産する製造業での原価計算。
製造指図書を利用し、原価計算表を作成する。
製造指図書には顧客名、納入場所、納期等が記載され、
製造指図書と原価計算表は共通の通し番号で関連付けされる。
製造指図書毎、仕掛品勘定に集計していき、完成した製造指図書の原価は完成品原価となり、
未完成の製造指図書の原価は月末仕掛品原価となる。
原価計算表
費目/指図書 001 | 002 | 003 | 合計
月初仕掛品原価 100 | 000 | 000 | 100
直接材料費 150 | 040 | 120 | 310
直接労務費 080 | 060 | 100 | 240
直接経費 100 | 030 | 080 | 210
製造間接費 120 | 100 | 030 | 250
合計 550 | 230 | 330 |
備考 完成 完成 仕掛
T仕掛品)
前月繰越 100 | 製品 780
材料 310 | 次月繰越 330
労務費 240
経費 210
製造間接費 250
製造直接費の賦課(ふか)または直課(ちょっか)
通し番号が付いていると直接費、通し番号がないと間接費で、
間接費は除き直接費を原価計算表に記入することを賦課または直課という。
製造間接費の実際配賦
製造間接費を通し番号ごとに配分することを配賦という。
配賦基準には金額や時間をもとに配分する方法があり、配賦率を算出する。
配賦率=製造間接費の合計を配賦基準としたいもので割る。
配賦額=配賦率×配賦基準数値
例)
製造間接 13200
配賦基準 作業時間
No1 12時間
No2 10時間
13200 ÷ (12+10) = 600/1H (配賦率)
No1 = 12×600 = 7200
No2 = 10×600 = 6000
配賦率とは、1基準単位あたりの製造間接費(金額)
製造間接費の予定配賦
前述の方法は製造間接費の実際配賦という。
通常以下の予定配賦(正常配賦)をすることが原則と考える。
(材料、労務費の予定計算はする・しない場合もある)
問題点として製造間接費の集計には時間がかかり、製品はできているが原価計算が遅れるという問題。
また、製造間接費は月により違うため、製造間接費の実際配賦額は毎月違う。
期首に予定配賦率を決定。
予定配賦率=1年間の予定製造間接費(製造間接費予算) ÷ 1年間の予定配賦基準(基準操業度)
予定配賦率に実際の配賦基準をかけて予定配賦額を計算する。
実際発生額を集計
予定配賦額と実際発生額の差から製造間接費配賦差異を求める。
その差異を期末に売上原価に加減算する。
例)
年間予定直接作業時間 288
年間予定製造間接費 144000
直接作業時間を配賦基準とし予定配賦率を計算
144000÷288=500/1H (予定配賦率)
直接作業時間23時間
仕訳)
仕掛品 11500 | 製造間接費 11500
製造間接費の予定配賦の場合、仕掛品スタート。
例)
間接材料3000、間接労務3000、間接経費7000を製造間接費勘定へ振替。
製造間接経費 13200 | 材料 3000
・ | 賃金 3000
・ | 経費 7200
予定と実際の差額を差異勘定へ
製造間接費配賦差異 1700 | 製造間接費 1700
売上原価勘定に振替
売上原価 1700 | 製造間接費配賦差異 1700
製造間接費配賦差異の差異分析
材料費、労務費、製造間接費の予定額と実際額の差異が原価差異。
原価差異のうち製造間接費だけは発生原因を分析する。
基準操業度
一年間の予定配賦基準値の合計。
製造間接費予算
基準操業度での製造間接費の積み上げ。固定と変動がある。
計算のためには基準操業度が必要。
固定予算(固定費ではない)
操業度が変化して変化しない決定方法。
当初決定した製造間接費を、操業度が変化して予算を変えない。
変動予算
変動費と固定費に分け、変動費は変動費率を用いる。
操業度が変われば、変動費は操業度に応じて変わるということ。
(公式法変動予算)
差異分析の公式法変動予算
予算差異と操業度差異に分けられる。(差異分析図を作成する)
予算差異
予算許容額と実際発生額の差異のこと。予算許容額とは実際操業度における予算額。
操業度差異
実際操業度と基準操業度その差。
差異分析図
例)
年間基準操業度288直接時間
年間固定費86400
変動比率200
実際直接作業時間23時間
製造間接費実際発生額13200
固定予算による製造間接費配賦差異
例)
年間基準操業度288直接時間
年間固定費86400
固定予算による製造間接費144000
(公式法の場合、固定費と変動費率の2つが提示される。)
実際直接作業時間23時間
製造間接費実際発生額13200
部門別個別原価計算
部門ごとに製造間接費の発生内容も変わってくるので、
製造間接費をいきなり製品に配賦するのではなく、まず部門毎に集計。
(製造間接費のみ)
部門を製造部門・補助部門に分ける。
製造部門は直接加工する部門。補助部門は、工場事務、生産管理等。
勘定連絡図での違い
第一次集計では、
製造間接費として一つに集計したあと、それぞれの製造部門・補助部門に分けていく。
仕訳)
切削部門費 | 製造間接費
組立部門費 |
動力部門費 |
修繕部門費 |
工場事務部門費 |
第二次集計では、
その後、補助部門に集計された金額を製造部門に再度集計していく。
仕訳)
切削部門費 | 動力部門費
組立部門費 | 修繕部門費
_ | 工場事務部門費
最終的に仕掛品への配賦。
仕訳)
仕掛品 | 切削部門費
_ | 組立部門費
第一次集計
先ず、部門個別費と部門共通費に分ける。
部門個別費とはどの部門で発生した製造間接費か分かる費用のこと。
(特定部門に設置した機械の減価償却等)
逆に分からないのが部門共通費。
(工場の減価償却費等)
部門共通費は部門費集計表を作成し、部門に対して指定のある配賦基準で配賦する。
例)
工場全体の製造間接費13200を
製造部門、補助部門に集計する。
仕訳)
切削部門 5600 | 製造間接費 13200
組立部門 5360 |
動力部門 800 |
修繕部門 840 |
事務部門 600 |
第二次集計
補助部門から製造部門へ配賦基準を用いて配賦する。
配賦基準は、補助部門の用役をどの程度製造部門が利用したか。
(動力消費量、修繕時間等)
補助部門同士のやりとり
補助部門から製造部門だけへ用役を提供するわけではなく、他の補助部門へ用役を提供する場合もあり、直接配賦法、相互配賦法がある。
直接配配賦法
補助部門同士のやりとりをなかったと仮定して配賦率を計算する。
仕訳)
切削部門 1120 | 動力部門 800
組立部門 1120 | 修繕部門 840
_ | 工場事務部門 600
相互配賦法(簡便法)
2回配賦を行う。(第一次配賦、第二次配賦)
1度だけ補助部門同士やりとりを認め2回目の配賦計算では直接配賦法と同じように処理する
仕訳)
切削部門 1110 | 動力部門 800
組立部門 1130 | 修繕部門 840
_ | 工場事務部門 600
製造部門費の仕掛品への実際配賦(指図書毎への配賦)
現時点で製造間接費は製造部門に集計されている。
実際配賦とは製造間接費が各製造部門から仕掛品に配賦していくこと。
指図書ごとに配賦するとき配賦基準は与えられる。
例)
第二次集計後
製造部門費 切削 6720
製造部門費 組立 6480
配賦基準 直接作業時間
仕訳)
仕掛品 13200 | 切削部門 6720
・ | 組立部門 6480
指図書毎の原価は仕掛品勘定では分かれていない。
原価計算表のみで分かれている。
予定配賦(製造部門費)
製造間接費は通常予定配賦する。
期首に予定配賦率を決定する。
(1)第一次、製造間接費を全ての部門に配賦
(2)第二次、補助部門費を製造部門に配賦
(3)製造部門費を仕掛品へ
この流れで(3)から始める。
部門費の貸方に予定額を仕訳して始める。
予定配賦率を決める。
予定配賦率 = 年間予算÷配賦基準の合計
予定配賦額 = 予定配賦額×実際配賦基準の数値
実際発生額の集計(第一次集計、第二次集計)
配賦差異 = 予定配賦額-実際発生額
売上原価に賦課
例)
予定配賦率を求める。
切削=配賦基準は運転時間
組立=配賦基準は作業時間
切削予定配賦率=262.5
組立予定配賦率=475
実際配賦基準の数値
運転時間24時間
No1=16時間
No2=8時間
作業時間16時間
No1=8時間
No2=8時間
原価計算表
No | No1 | No1
切削 | 4200 | 2100
組立 | 3800 | 3800
仕訳)
仕掛品 13900 | 切削部門費 6300
| 組立部門費 7600
実際発生額
切削=6720
組立=6480
差異勘定へ
6300-6720=△420
7600-6480=1120
仕訳)
製造部門費配賦差異 420 | 切削 420
組立 1120 | 製造部門費配賦差異 1120
差異は借方がマイナス。貸方プラス。