中小製造業は「脱属人化」ではなく「戦略的属人化」

コンサルが売る標準化の正体

なぜ外部コンサルや大手ベンダーは、判で押したように標準化や脱属人化を勧めてくるのか。その正体は、経営層の生産性を上げるための管理ツールに他ならない。

ERPの本質は、グローバルで統一されたKPIをリアルタイムで監視するためのツール。 その透明性を確保するために、現場には大量のデータ入力という不便を強いる構造になっている。

だからこそ、導入には強烈なトップダウンが必要になる。

コンサルが言う標準化は、管理する側にとっては正義だが、現場にとっては手足を縛る鎖になり得る。 この構造を理解せずに導入すれば、現場が疲弊してしまう。

中小製造業の生存戦略は戦略的属人化

特に受注生産・多品種少量の中小製造業において、この標準化は毒になる可能性がある。

中小企業の競争力の源泉はベテランの勘や柔軟な対応力といった属人化された部分にある。 これを標準プロセスに押し込めば、単なる代替可能な工場に成り下がる。

目指すべきは脱属人化ではなく、あえて属人化を許容する戦略的属人化。判断や職人技はそのまま残し、その前後にある情報収集や転記といった雑用だけをAIにやらせる。

ただし、標準化=悪、属人化=善という単純な二項対立に陥ってはいけない。

誰がやっても同じであるべき作業は標準化した方が全員が楽になる。一方で、材料の選定判断や加工手順の組み立てのように、経験が品質に直結する領域は属人化を残すべき。

線引きの基準はシンプルで、その作業に判断が伴うかどうか。判断が不要な作業は標準化して手を抜き、判断が必要な領域には属人化を許容して力を集中させる。 この仕分けを現場のベテランと一緒にやることが、戦略的属人化の第一歩になる。

内製エンジニアと情報のワンストップ化

では、具体的にどうシステムを組むべきか。 答えは内製化と入力の一本化にある。

外部ベンダーに頼むと、どうしても管理しやすい標準を押し付けられる。 だからこそ、社内の業務を知る人間、内製エンジニアにAIツールを持たせ、現場の痒いところをかく小さなツールを爆速で作らせるのがいい。

狙うべきゴールは、入力が1回で済むデータの流れ。

現状、営業・技術・製造がそれぞれ別のExcelやシステムに同じデータを打ち込んでいる。 これがミスの温床であり、無駄の極み。

情報の最上流、つまり見積や受注の段階でAIを使ってデータを確定させ、あとはAIがそれを翻訳しながら下流へ流す。 人間は確認と修正だけを行う。

ERPの機能の9割は不要と割り切り、現場の強みを活かすための隙間を埋めるAIを自分たちで作る。 これが2026年現在、最もROIが高いIT投資の形と言える。

キラキラしたAIの話に踊らされず、自分たちの現場を起点に小さく、泥臭く始めること。 それが、2026年のAI活用における最も確実な一歩になる。