中小製造業のファイル管理は、フォルダ構造をデータベース代わりにする

案件のファイルをもっと早く開きたい

共有フォルダに年度別や部署別でフォルダを分けて、ファイルを管理している会社は多い。普通に運用できている会社がほとんどだと思う。

ただ、受注生産で案件数が多くなってくると、「あの案件の図面どこだっけ」と探す場面が増えてくる。年度フォルダの中を開いて、顧客名で探して、その中のファイルを確認して——という手順を毎回やるのは地味に手間がかかる。

自分が現場で試して効果があったのが、製造番号(受注番号)をキーにしたフォルダ構成になる。これは既存のフォルダ管理を置き換えるというより、案件単位でファイルをまとめる仕組みを一つ加えるという話。

製造番号でフォルダを切る

受注生産の中小製造業なら、最もシンプルで効果的な方法がある。製造番号(または受注番号)でフォルダを作ること。

製造番号がわかれば、その案件に関するファイルはすべて一つのフォルダに入っている。図面も見積書も検査記録も発注書も、案件単位でまとまっている。

「あの案件の図面どこ?」→ 製造番号で開く → ある。これだけで、ファイルを探す時間の大半がなくなる。

フォルダ構造がデータベースの役割を果たす

この方法が効くのは、フォルダ構造自体が案件をキーにしたデータベースになっているからになる。

以前の記事で「受注生産のデータは見積番号から始める」と書いた。データベースでいえば、見積番号や製造番号が主キーで、それに紐づくデータ(図面、見積、検査記録)がぶら下がっている。フォルダ構造でも同じことができる。製造番号がフォルダ名、その中のファイルが紐づくデータ。

普通のデータベースと違うのは、誰でもエクスプローラーで開けるということ。特別なソフトがなくても、フォルダをたどれば必要なファイルにたどり着ける。

ソフトからも一発で開ける

ここからが実用的な話になる。フォルダを製造番号で切っておくと、業務ソフトとの連携が簡単にできる。

自分が実際にやった方法はこうなる。業務管理のソフトに「フォルダを開く」ボタンを付ける。ボタンを押すと、今見ている案件の製造番号に対応するフォルダが自動で開く。ソフトの中にはファイルを保存しない。あくまで普通のフォルダにあるファイルへの入口を提供するだけ。

Excel VBAでも同じことができる。セルに製造番号が入っていれば、VBAでパスを組み立ててエクスプローラーで開く。数行のコードで済む。

この設計のポイントは、ソフトはファイルへの便利な入口であって、ファイルの保管場所ではないということ。ソフトが壊れても、ファイルはフォルダにそのまま残っている。ソフトを入れ替えても、ファイルは影響を受けない。

ファイルをソフトに閉じ込めない

生産管理システムや文書管理システムの中には、ファイルをシステム内部に格納するものがある。登録したファイルはシステムからしかアクセスできない。

管理の観点からは正しい。勝手にファイルを移動されたり消されたりしない。バージョン管理もシステムが担う。大企業ならこの方が安全だろう。

しかし中小製造業では、これがリスクになることがある。

  • システムが止まるとファイルにアクセスできない。 サーバーが故障したら図面が見られない。業務が止まる
  • システムを入れ替えるとき、ファイルの移行が大変。 データのエクスポート機能がなければ、ファイルを取り出すだけで一仕事になる
  • 業者に依存する。 ファイルの取り出しに業者の協力が必要になると、以前の記事で書いた「知識のロックイン」と同じ構造が生まれる

以前の記事で「入れ替えられる設計」の重要性を書いた。ファイル管理でも同じ原則が当てはまる。ファイルは普通のフォルダに、普通のファイルとして置いておく。 ソフトはそこへの便利な入口を提供するだけ。こうしておけば、ソフトが変わってもファイルは残る。

バックアップも楽になる

ファイルが普通のフォルダにあるということは、バックアップも単純になる。フォルダごとコピーすればいい。

以前の記事でバックアップの重要性を書いた。ファイルがシステム内部に格納されていると、バックアップにはシステムのエクスポート機能やデータベースのバックアップが必要になる。フォルダにあるなら、フォルダごと外付けHDDにコピーするだけで済む。

個人フォルダは残していい

共有フォルダの中に個人名のフォルダがある会社は多い。「田中」「鈴木」のようなフォルダに、それぞれが自分のファイルを入れている。

これを「属人化だからやめるべき」と言う人もいるが、個人フォルダは使いやすい。自分のファイルの置き場所がはっきりしているし、作業中のファイルを他の人に触られる心配もない。無理になくす必要はないと思っている。

ただし、案件の成果物が個人フォルダにしかない状態は避けたい。図面の最終版、提出した見積書、検査成績書。これらは案件に紐づく共有のファイルであって、個人のものではない。担当者が異動や退職したときに、案件のファイルが見つからないという事態になる。

以前の記事で「属人化のトリアージ」について書いた。ファイル管理でも同じ考え方が使える。個人の作業ファイルは個人フォルダに、案件の成果物は製造番号フォルダに。この使い分けだけ守れば、個人フォルダはそのまま残していい。

フォルダ整理のルールは最小限でいい

製造番号でフォルダを切る。案件に関するファイルはそのフォルダに入れる。この2つだけ守れば、細かい命名規則やサブフォルダのルールは最小限でいい。

現場のルールは少ないほど守られる。「製造番号のフォルダに入れてくれ」は守れる。「ファイル名は日付+版数+担当者名で、サブフォルダは種類別に分けて、命名はキャメルケースで」は守られない。

運用で大事なのは、新しい案件が発生したときにフォルダを自動で作る仕組みを入れておくこと。手動で作ると忘れるし、名前の揺れが出る。受注登録のタイミングでフォルダを自動生成するだけで、構造の一貫性が保てる。


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