パッケージは「失敗」しにくい
最初に整理しておくと、パッケージソフトの導入で根本的な失敗が起きることはあまりない。パッケージは仕様通りに動く。合う合わないはあっても、動かないということは基本的にない。
問題が起きやすいのは、フルスクラッチやカスタマイズの領域になる。自社の業務に合わせて作り込む部分で、エラーが出る、消せないデータが残る、依頼したはずの機能が実装されていない、といったことが現実に起きる。
「失敗」の線引きは曖昧
ただし、何をもって「失敗」とするかは人による。「自分が言った要望が入っていない」と思う人もいれば、「これで十分」と思う人もいる。見方の違いであって、明確な基準があるわけではない。
ある程度客観的に「失敗」と言えるのは、こういうケースだろう。
- 操作するとエラーが出る
- 不要なデータが削除できない
- 依頼した機能が実装されていない、または仕様通りに動かない
逆に、「もう少しこうしてほしかった」というレベルの不満は、失敗というよりすり合わせ不足の話になる。
100%成功した導入はない
自分は過去に何度もシステム導入に関わってきたが、100%思い通りに仕上がったケースはない。小さなエラーは必ず残るし、どうしてもソフト側で実現できない機能が出てくる。
象徴的なのは、業者のSEが「この機能はシステムでは対応できないので」と言って、対策用のExcel VBAを書いて持ってくるケース。システム化するために導入したはずなのに、結局Excelで補完しているという本末転倒な状況は珍しくない。
検収が終わればそこで線が引かれる
システム導入には検収というプロセスがある。納品物を確認して「これで受け取ります」と合意する手続きになる。
検収が終わった後に見つかる問題は、保守契約の範囲内で対応してもらえる軽微なものに限られる。「あの機能が足りない」「ここの動きが違う」と言っても、追加費用なしでは対応してもらえないことが多い。
つまり、検収後のシステムが「完璧ではないが致命的でもない」状態であれば、そのまま使い続けることになる。これはどこの会社でも同じで、100点のシステムを使っている会社はほぼないと思っていい。
すぐには止められない現実
「合わないなら別のシステムに変えればいい」と思うかもしれないが、中小企業にとってそれは簡単ではない。
フルスクラッチやカスタマイズで作ったシステムは、資産として減価償却の対象になる。金融機関からの融資で導入している場合もある。会計上も資金繰り上も、導入して数年で捨てるという判断は取りにくい。
現実的には、最短でも5年程度は使い続ける前提になる。だからこそ、「検収後にどう付き合うか」が重要になってくる。
使いながらできることをやる
検収後のシステムに不満があっても、ただ我慢して使い続けるだけが選択肢ではない。特にフルスクラッチで作られたシステムの場合、内部に手を入れられる余地があることが多い。
ただし、契約上はシステムの内部を勝手に触ることが禁止されている場合もある。保守契約の範囲外の操作で問題が起きた場合、責任を問われる可能性がある。
ここは交渉の余地がある。不具合が多く残っている状態なら、「これだけ問題が残っているので、自分で対応させてほしい。それが難しいならきちんと修正してほしい」と伝える。開発元が小規模なシステム会社であれば「自分で触ってもらって構いません」と柔軟に対応してくれることも多い。
大事なのは、 「自分で操作していい」という許可をメールなど文面で残しておくこと。 口頭の了承だけだと、後から「勝手に触られた」と言われたときに守れない。この一手間が、自分で手を入れる際の保険になる。
その上で、できることは意外とある。
- DBに直接接続する。 システムのデータベースにVBAやSQLで接続し、システム側では出せないレポートや集計を自分で作る。データさえ取れれば、足りない機能を補完できる場面は多い
- サーバーの設定を見て理解する。 権限設定や接続先の構成を把握しておくと、トラブル時に業者を待たずに対処できることがある
- 業者に頼らず直せる範囲を広げる。 マスタデータの修正、帳票のレイアウト変更など、自分で触れる部分を少しずつ増やしていく
これらは一朝一夕にはできないが、5年使い続ける前提であれば、じっくり取り組む時間はある。
次の入れ替えに向けた準備
5年後に入れ替えのタイミングが来たとき、前回と同じ轍を踏まないための準備もこの期間にできる。
今のシステムを使いながら「何が足りなかったか」「どの業務がシステムに乗らなかったか」を記録しておく。検収前には気づかなかった問題点が、日々の運用の中で見えてくる。
このデータがあれば、次の導入時に「ここだけは絶対に実現してほしい」と具体的に伝えられる。要件定義の精度が上がるだけで、同じ失敗を繰り返す確率は大幅に下がる。
完璧を求めず、使いながら育てる
システム導入に100点はない。これを最初から受け入れておくだけで、検収後の心構えが変わる。
70点のシステムを自分の手で80点に近づけていく。足りない部分はExcelやVBAで補完する。そして5年後の入れ替え時には、今回の経験を活かしてより良い判断をする。
中小製造業のシステムとの付き合い方は、導入して終わりではなく、使いながら育てていくものだと思っている。
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