中小製造業が広報活動を始めるなら ── プレスリリースとメディアアプローチの基本

この記事の前提

前の記事で、中小製造業のHPは「届ける相手がいないなら、作りっぱなしで十分」と書いた。

中小製造業のホームページ ── 「作りっぱなし」が正解の場合と、そうでない場合

この記事はその続きで、「積極的に情報発信していきたい」という会社向けになる。新規取引先の開拓、採用強化、自社技術の認知向上——そういう目的で広報活動を考えているケースを対象にしている。

プレスリリースとは何か

広報活動の基本的な手段の一つに、プレスリリースがある。自社のニュース——新製品・新技術・取り組みなど——をまとめた文書を、新聞・雑誌・Webメディアの記者や編集者に送り、記事として取り上げてもらうことを狙う方法になる。費用はかからず、価値ある情報があれば誰でも送れる。

ただし、広報は宣伝ではない。プレスリリースを受け取る記者は、自社の読者にとって価値ある情報を探しているのであって、「紹介してほしい」という依頼を聞く場ではない。記者は美辞麗句より事実を求めており、「〇〇という課題に対して〇〇という方法で解決した」という具体的な事実だけが残る。

ニュース価値がなければ採用されない

プレスリリースが採用されるかどうかは、ニュース価値で決まる。以下のどれかに当てはまらないと、記者はスルーすることになる。

  • 初めてのこと(初・新・最):業界初、地域初など。「この地域・この業界でうちが初めてではないか」という視点で考えてみると、意外と見つかることがある
  • 社会課題の解決:人手不足、環境負荷、サプライチェーンの問題など、今の社会が抱えている課題と自社の取り組みがつながっているか
  • なぜ今か:流行・行事・社会情勢との関連。「なぜ今この話題か」に答えられないと、タイミングが合わないと判断されてスルーされることが多い
  • 読者が知りたいこと・読者を喜ばせること:記者の頭の中には常に「うちの読者はこれを読みたいか」という問いがある
  • 意外な事実:「えっ、そうなの」という驚きがあると取り上げられやすい
  • 弱者を助けること、正義に関わること:地域の雇用を守る、環境に配慮するという文脈は記者の関心を引きやすい

上記のどれにも当てはまらない情報は、どれだけ丁寧に送っても採用されない。まず「今、ニュースになる情報があるか」を問うことが先になる。

中小製造業が狙えるメディアはどこか

メディアには特性があり、その特性に合わない情報は採用されない。テレビや全国紙は取り上げる基準が高く、中小製造業の話題が乗るケースはほぼないと考えた方がいい。

狙いやすいのは以下になる。

  • 地方紙・地域メディア:地域密着の話題は取り上げられやすい。全国メディアでは弱い話題でも地方紙では価値がある
  • 業界Webメディア:monoistや製造業専門のWebメディアは製造業の取り組みを積極的に取り上げる。技術・工法・素材の話との相性がいい
  • 地元のフリーペーパーや商工会メディア:採用・地域貢献の文脈で動きやすい

まずプレスリリースを送ってみる

送り先はメディアの問い合わせ窓口(報道関係者向けの連絡先)が基本になる。多くのメディアはHPに「プレスリリース受付」の窓口を持っている。SNS(特にX)で「プレスリリース受け付けます」と発信している記者・編集者に直接送るのも有効になる。ただし、情報受け付けを明示している人だけに限る。

正直なところ、プレスリリースは送っても採用されないことの方が多い。記者は毎日大量のリリースを受け取っており、ニュース価値の判断は厳しい。ただ、費用ゼロで試せる手段なので、まずここから始めてみることには意味がある。

確実に載せたいなら有料記事という選択肢もある

「確実に掲載したい」「記事の流れを経験したい」という場合、 有料記事(タイアップ) という方法もある。業界メディアの多くは、費用を支払うことで記事掲載や取材記事の作成を依頼できるサービスを持っている。費用は媒体や形式によって幅があるが、数十万円単位になることが多い。

ただし、費用をかけて記事を出しても、その媒体の読者が自社のターゲットと合っていなければ効果は出ない。届けたい相手を決め、その相手が読んでいる媒体を選ぶ順番が必要になる。


このシリーズの他の記事:

シリーズ記事一覧・著者への相談はこちら →